酸っぱい葡萄
フラクタル心理学を学んで便利なことの一つに、兄弟順位の知識があります。もちろん、診察やカウンセリングのみならず、日常生活で役立つ知識です。
今回はそれが役立った例のご紹介です。
面談希望のクライアント、Oさん。
兄弟順位・第一子。
長年いた部署(役職あり)から、畑違いの部署へ異動(役職なし)になり、怒りを感じている。
来室時は眉間に皺を寄せて、ピリピリした雰囲気。
・前の部門で極めていきたかったのに、取り上げられた。
・今度の部署は人との連携が大事、自分には向いてない
と、しばし怒りを口にされていました。
とても優秀そうな話ぶりですし、仕事に誇りもあるようなので、この異動は決してネガティブなものではないのでは?と思い、
「上司はどうして、そんな異動をさせたのだと思います?・・・期待されてるのでは?(=あえて苦手な連携することを学ばせて、さらに上のステージに行って欲しいのでは?)」
と聞くと、
「‥上司にもそう言われました、期待してるからだと。
でも‥出世なんかしたくないんです!!」
(出世したくない・・。第一子、ホントかな?!)
なんだか、イソップ寓話の「酸っぱい葡萄」のよう。
※酸っぱい葡萄 あらすじ
お腹を空かせた狐は、おいしそうな葡萄を見つけた。食べようとして懸命に跳び上がるが、高いところになっていて、何度跳んでも届かない。狐は、怒りと悔しさから「どうせこんな葡萄は酸っぱいんだ。誰が食べてやるものか」と負け惜しみを言って去った。
Oさんの本音を察するに、
今までなら、慣れたところで苦労せずに上でいられたのに。
苦手なことに取り組みながら、下になって一から築かなければならない。
そんな苦労をなんで自分がしなきゃいけないんだ。
簡単に手に入らないなら、いらない、
元々出世なんかしたくなかったんだから!(と、思いたい)
怒ってる様子なので否定はせず、
「出世したくないんですね、上に行くのが向いてそうですけど‥。
今は一からだけど、今までの技術に加えて、連携の能力が備わったら最強じゃないですか。
出世はしなくても、これからどの部門にいっても、もしかしたら転職しても、絶対上手くやっていける、最高の財産になりますね。」
というと、ちょっとハッとして落ち着いてきました。
「それに、前のところにずっといたら、上に行くにも限界があるけど、今回の経験で幅が広がれば、もっと周りから信頼される上司になれるでしょうし、さらに上を目指せるかもしれないですよね。選択肢も広がりますよね。」
Oさんの顔つきが変わりました。
「そうですね、その視点はなかったです。上を目指してがんばります!」
やっぱり第一子は、地位が好き。
遠くにある欲しいものよりも、近くの苦労にフォーカスしてしまっていて、自分が本来、地位を望んでいることがわからなくなっていたようです。
ニコニコ笑顔になって面談を終えられて、私もホッとしました^^;
兄弟順位の知識があって、良かったなぁと思った瞬間でした。
初めて顔を合わせて信頼関係もないまま面談することも多いので、とても役立っております。